初心者でも大丈夫!頭蓋骨の解剖学シリーズ
今回は側頭骨が体のどんな機能(働きと関係しているのかを解説していきます。
側頭骨は「問題の根源」と言われたりしていますが、なぜトラブルが起きやすいのか、どんな問題が生じやすいのかを考えていく必要があります。
前回の側頭骨の解剖学的な位置を踏まえて読んで頂くと理解しやすいかと思うので、そちらも合わせてご参照ください。
オステオパシー・ドクターから直接頭蓋骨について学んでいるため、記事の信頼性に繋がるかと思います。
顎関節との関係
側頭骨は下顎窩(かがくか)という下顎骨と関節している部分があります。
左右の側頭骨がそれぞれ下顎と関節しています。
茎状突起から下顎骨への靭帯や筋肉も出ています。
顎関節はその形状から関節運動として「滑走」と「転がり」という二つの運動ができます。
この動きによって顎の開閉や咀嚼時に必要なわずかな左右の動きを実現させています。
側頭骨と下顎骨の関節部は左右で2つありますが、下顎骨は一つです。
つまり、片方だけの顎関節を動かすということはできません。
左右にある顎関節はお互いに影響を与えるという複雑なシステムの上に成り立っているのです。
また上下の歯の接触による影響も受けます。
もし歯の接触に異常が生じると顎関節にも不適切な刺激が加わることになり、何らかの症状が出てくる可能性があります。
私たちはただシンプルに顎の開閉ができるように生まれ備わっていますが、顎を使うというのは複雑な仕組みが組み合わさって出来ているのです。
その仕組みの中の大事な部分の一つとして側頭骨があります。
もし、側頭骨にゆがみや捻じれが生じていたとしたら顎関節にどれだけの影響が出るでしょう。
顎関節症、噛み合わせの悪さ、顎を開くときにポキッとなる、顎が開きづらい、など顎に関わる多くのトラブルの原因として側頭骨は深く関わっています。
耳との関係
側頭骨には外耳孔(がいじこう)という耳の穴に直接つながる孔があります。
そこから耳の器官へとつながっています。
外耳道⇒鼓膜⇒中耳⇒内耳
という順に奥に入っていきます。
鼓膜から奥にある中耳では耳小骨(じしょうこつ)があり、鼓膜からの振動を内耳にある蝸牛(かぎゅう)というカタツムリのような器官に伝えています。
音の振動が鼓膜を介して内耳まで伝わると、内耳の中のリンパ液や蝸牛の有毛細胞が振動して音の信号となって私たちは感知しています。
側頭骨にゆがみやねじれなどの問題があると、この耳の器官にも影響を与えます。
特に内耳はリンパ液で満たされています。
しかし、ゆがみやねじれが影響しリンパ液の循環が滞ってしまうことがあります。
特に側頭骨と後頭骨の間にある頸静脈孔(けいじょうみゃくこう)は頭部のリンパや静脈の排液を担っています。
そこが滞ってしまうと頭蓋内の老廃物の排泄システムが正常に働かなくなってしまいます。
その結果、耳の中での炎症がなかなか引かない中耳炎や耳鳴りなどのトラブルが起きてしまいます。
平衡感覚との関係
耳の奥の内耳には平衡感覚をつかさどる三半規管(さんはんきかん)があります。
三半規管はリンパ液が満たされていて、その液体が体が動くのに合わせて動くことで私たちは平衡感覚を感知しています。
三半規管と言われると、代表的な不調がめまいです。
特にメニエール病は医学的には「原因不明」とされていますが、メニエール病の方の内耳には「内リンパ水腫」というリンパによる水膨れが出来ていることが分かっています。
なぜ、そんな水膨れが出来てしまうのでしょうか。
その鍵は前述した通り頭蓋内のリンパ廃液システムにあるとオステオパシーでは考えられています。
頭蓋骨・顎関節・頸椎を調整することで長期的な有効性が認められているなど多くの研究論文があります。
その中でも特に側頭骨は着目されています。
側頭骨は「問題の根源」
側頭骨は顎や耳など身体の大切な働きと密接に関わっています。
側頭骨のゆがみ・捻じれはそれらに影響を及ぼすことはなんとなくイメージがつきましたでしょうか?
ですが、ここでひとつ注意して頂きたいことがあります。
それは「側頭骨だけが悪いのではない」ということです。
側頭骨は言うまでもなく頭蓋骨全体の一部になります。
側頭骨は他にも蝶形骨、後頭骨、頭頂骨、頬骨、下顎骨など多くの骨と連結しています。
つまり、それらの骨の影響も受けるということです。
側頭骨が単体で悪さをしている訳ではなく、他の骨のゆがみや捻じれの影響を複合的に受けてしまうのが側頭骨だと言われています。
よくやってしまう間違いは、耳鳴りだから、中耳炎が起きているから「側頭骨が悪い」と決めつけ、側頭骨だけを調整しようとすることです。
それは体の全体性を無視した行為になってしまいます。
当然望むような効果も出ないでしょう。
私たちが見なければいけないのは「部分としての全体性」と「全体性としての部分」になります。
「木を見て森を見ず」あるいは「森を見て木を見ず」にならないように注意しなければいけません。
側頭骨の機能まとめ
ポイントをまとめます。
・側頭骨は耳の内耳や中耳に影響し、中耳炎や耳鳴りなどのトラブルを起こす。
・側頭骨は三半規管に関わり、めまいやメニエール病と関連する。
・側頭骨は側頭骨単体で悪さをするのではなく他の骨からの影響を複合的に受けている。
側頭骨はとても重要な骨ですが、頭蓋骨、そして身体全体の一部であることを忘れないでいてください。
この側頭骨(そくとうこつ) 【頭蓋骨の解剖学】を書いた人

蝶形後頭底結合がお手当て療法を行う際にとても重要なポイントであり、考えであることをぜひ憶えておいて頂けたらと思います。丸井恒介(まるいこうすけ)
まごころお手当て会代表
【生年月日】1985年2月3日
【出身】東京都調布市
【趣味】バドミントン、パソコン、筋トレ
【家族構成】妻と一児の父
【経歴】
2013年 日本リハビリテーション専門学校卒業(夜間4年制)理学療法士免許取得
2013年 医療法人社団河井病院勤務
2016年 「府中オステオパシーまるちゃん整体院」開院
理学療法士免許取得後、病院勤務にて重篤な方(ヘルニア・狭窄症などの脊椎疾患、五十肩、変形性関節症などの運動器疾患、脳梗塞後の麻痺、重度の呼吸器疾患や糖尿病、人工関節術後の方、交通事故の後遺症)を主に担当してきました。
その経験を生かし、現在は東京の府中にある整体院で病院や整骨院に行っても改善しない痛みやしびれにお悩みの方、更年期障害や難病の方などへカウンセリングと施術を行っています。
サザーランド博士から脈々と受け継がれ、発展した療法をオステオパシー医師のドクター・ジェラスからアメリカまで直接指導を受けに行っています。
また、本来オステオパシー医師ではないと受けれない頭蓋領域の内容をドクター・クロウから学んでいます。